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反政府デモが続くタイでは議会下院を解散し、来月2日に選挙が行われる予定だが、反政府側は首相の即時退陣や選挙の延期などを求めて対立が深まっている。
デモ隊はインラック首相に圧力を掛けるため、13日からバンコク中心部などの主要交差点に拠点を設けて交通を遮断し、バンコク封鎖を予告している。
混乱する現地に住む日本人の間では不安が広がっており、バンコク日本人学校は13日を休校することにした。
元の記事を読む→ 【2014年01月12日:NHK】
いったいタイで何が起こっているのか? タイの人たちは何でもめているのか? なんで選挙が大騒ぎになっているのか? なんかよく分からんなぁ?と思ってらっしゃる方が多いと思います。そこで、今タイで起こっていることをできるだけ分かりやすく解説したいと思います。一言で言いますと、民主主義だからこそ起きている問題です。
事の発端は、2001年にタクシンという人がタイの首相になったことです。そのころタイでは経済的な格差が問題となっていました。北部や東北部は農村地帯で農業に従事する人が多く、タイの中で貧しい地帯とされていました。
そこでタクシン首相は農村や地方を優遇する政策を採りました。補助金を給付したり、農民が作った米を市場価格より高く買い取ったり、要はバラマキ政策です。なぜばらまきをするかは日本と同じです。有権者を味方に付ける選挙対策です。
しかし、国家の財源は限りがあります。限りがある中でやりくりしているわけです。今まで100円のうち30円を農村のために使っていた。それを50円にしようとすると、どこかを20円減らさないといけない。農村に20円増やすためには都市を20円減らさないといけない。貧しい人に20円増やすためにはリッチな人を20円減らさないといけない。そうなりますよね。
つまり、農村や貧しい人を優遇することによって、タクシン首相はその逆の立場である都市や富裕層の既得権益を奪うことになってしまったわけです。
そうなると既得権益層はおもしろくありません。これ以上好き勝手されてたまるか~!ってことで、彼らは反タクシン派となります。これによって貧しい自分たちを優遇してくれるタクシン首相を支持するタクシン派と、既得権益を奪われてブチ切れかけの反タクシン派という対立が生まれました。
さらに、貧しい人は農村地帯である北部や東北部に多く、豊かな人は首都があるバンコクなど南部に多いため、北部・東北部のタクシン派、南部の反タクシン派という南北対立まで生み出し、国を二分する対立に発展したのであります。
その後、タイでは軍事クーデターが起こり、タクシン首相は海外に事実上亡命することになりました。その後首相が何人か変わったのですが、2011年に就任した現在のインラック首相はタクシン元首相の妹です。インラック首相率いるタイ貢献党は、海外にいるタクシン元首相がタイに戻れるようにしようと動きました。
これは反タクシン派としては受け入れられませんので、反タクシン派による反政府デモが起こったわけです。そして反タクシン派はインラック首相の即時退陣などを要求しました。
そこでインラック首相は議会を解散して総選挙をすることにしたのですが、これをやられると反タクシン派は非常に困ります。なぜかというと、タクシン派=農民と貧しい人=タイにたくさんいる人なのです。(笑)
反タクシン派は都市住民や富裕層、中間層です。未だ農業国であるタイでは都市住民や富裕層は少数派です。そして農民や貧しい人が多数派です。選挙なんてやられたらタクシン派が勝つのは分かりきっている。反タクシン派はなんとしても選挙に持ち込むのは避けたい。
そこで反タクシン派は奇策に打って出ました。それは、選挙の立候補受付所に対する包囲などの妨害です。
上の図をご覧ください。タイの議会定員は500人です。議会には定員とは別に「定数」というものがあります。最低でもこれ以上は参加してないと議会は開けませんよ、という最低人数条件です。そりゃ500人の定員で10人しか出席してない議会で国のことを決められたら困りますもんね。
タイでは定員500人の95%、つまり475人以上の議員がいないと議会を開けないという決まりになっています。ところが、反タクシン派が立候補受付を妨害した結果、28の選挙区で誰も立候補の受付ができず、立候補者ゼロとなりました。
ってことは、このまま選挙をするとこの28の選挙区からは誰も議員を選出できないことになります。1人区の小選挙区ですので28人が欠員となる。つまり、500人の定員のうち、500-28=472人の議員しか選出することができず、475人の定数に3人足りないってことになります。
足りないんですから議会を開くことはできません。するとどうなるか? タイは民主主義国ですから議会を開かないと首相を選出できません。インラック首相が辞任して議会を解散して選挙を行う。このままでは次の首相がいない状態になってしまうわけです。
しかしまぁ、立候補受付事務所の封鎖とかよく思いついたよね。苦笑) 混迷するタイの政情。この先どうなるのでしょうか? 注視したいと思います。